日本人の会話はゴルフ、アメリカ人はラグビースタイル?
外国人と会話する際に大きな問題となるのが「言葉の壁」です。
「海外で活躍したいなら、まずは英語だ!」といった形で、英会話教室など語学力を伸ばす事だけがいつも注目されます。
しかし、いくら言語が喋れても外国人とのコミュニケーションが円滑に行くとは限りません。
それは文化的背景による価値観の違いにより、コミュニケーションの取り方が国によって異なるからです。
今回の記事では、ビジネスでの会議を例に、日本とアメリカのコミュニケーション方法の違いについて、ご紹介します。
1. 日本のコミュニケーションはゴルフスタイル?
日本では会議では相手が話終えるのを待つ
日本人とアメリカ人のコミュニケーションの取り方には、大きな違いがあります。
スポーツで言うと、日本人のコミュニケーションの取り方はゴルフスタイルに例えられます。
何故、日本のコミュニケーションの取り方はゴルフスタイルと呼ばれるのでしょうか?日本の会社の典型的な会議スタイルを見てみると、それが良く分かります。
日本では、人の話を途中で遮らずに全て話し終えるまで待つのがマナーとされていて、これがまるでゴルフをしている様なのです。
例えば会議では、Aさんが発言している間それ以外の人達はAさんの発言に注目し、Aさんが全て話し終えるまで待ちます。
Aさんが話し終えたら、今度はBさんが同調や反対意見を話し、Bさん以外の人達はBさんの話が終わるまで待ちます。
勿論、全てがこれに当てはまる訳ではないですが、日系企業の会議では律儀よく順番に意見を述べていくゴルフのようなスタイルを取っているのが、典型的な例ではないでしょうか。
日本的コミュニケーションの文化的背景
日本人がゴルフのようなコミュニケーションを取る背景は、日本人は「文化的に順序を非常に大切にする民族だから」と私は思っています。
例えば日本の伝統的な茶道では、お茶の立て方に以下のような順序があります。
1.一礼する
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2. 建水(けんすい)※を左膝に揃えておく。
3. ふくささばきをする。
4. 棗(なつめ)※を拭く。
5. 茶杓(ちゃしゃく)※をふくさで拭く。
6. 茶碗(ちゃわん)に湯を入れる。
7. 茶碗の湯で茶筅(ちゃせん)通しをする。
8. 湯を建水に捨てる。
9. 茶碗を拭く。
10. お菓子をすすめる。
11. 棗からお茶をすくって茶碗に入れる(茶杓2杯)
12. 湯を茶碗に入れる。
13. ふくさで鉄瓶(てつびん)のフタを押さえる。
14. 茶筅で茶を点てる。
15. 茶碗の正面を向こうへ回す。
16. 茶碗をお客に差し出す。
※建水…茶碗をすすいだ水を捨てるための器です。
※棗…お茶の入った器です。
※茶筅…抹茶をかき回して分散させるための道具です。
茶道にはこんなにも段取りがあるなんて凄いですね!
この順序を間違えずに行う事がマナーとされており、この動きを極める事で日本伝統の美しい振る舞いが出来るようになるのです。
特に会議のようなフォーマルな場において、日本人が欧米の人とコミュニケーションをすると、日本人は謙虚、悪く言えば内気で話さないと思われがちです。
しかし日本人がゴルフのようなコミュニケーションスタイルを取るのは、シャイであることもそうですが、文化的に作法を重んじる姿勢が根付いているからだと、私は思っています。
その文化を背景に、日本人は自分の意見をどんどん行っていくスタイルにあまり慣れていないのだと思います。
2. アメリカ人の会話がラグビースタイルだと言われる理由
アメリカでは会議では相手が話終えるのを待たない
日本人がゴルフに例えられる一方、アメリカ人のコミュニケーションはラグビースタイルと言われます。
アメリカでの典型的な会議では、会議へ参加しているメンバーがラグビーをするかのように次から次へと一斉に自分の意見をぶつけ合います。
相手が話している途中でも、話を遮って自分の意見を述べることさえあり、会議の参加者で発言しない人は、会議に必要無い人と見なされてしまいます。
このようなラグビースタイルだと、会議では皆が言いたい事を秩序なくぶつけるので、まとまりが無いのでは?と疑問に思うかもしれません。
しかしそれでも議論が成立するのは、アメリカでは結論を先に述べるからだと思います。
回りくどい言い方はせず話のポイントを先に述べるので、聞き手は相手の意見を直ぐに理解でき、反対や同調などがあればすぐさま割り込んでいけるのです。
アメリカ的コミュニケーションの文化的背景
アメリカのコミュニケーションがラグビーのようなスタイルになる背景として、「アメリカは移民の国」だという事が挙げられると思います。
イギリス人による植民地化や、多くの奴隷・移民が西部開拓などを押し進める力となり、多様な人々の力によりアメリカは成長してきました。
色々な人種が入り乱れるアメリカのような国では、自分の意見を述べなければその多様性に一気に押し潰されてしまうのでしょう。
また、アメリカでは何か自分が納得しない事があるとすぐに相手を裁判で訴えます。
日本で裁判となるとかなり深刻な事態を想像しますが、アメリカでは訴えることのハードルはとても低く、日常的に行われます。
私のアメリカ滞在中にアメリカ人カップルと同居していた事があったのですが、そのカップル間で裁判沙汰となり、私は全く関係無いのに危うく参考人として証言台に立たされる所でした。笑
アメリカ人がすぐに裁判で訴える例を見ても、アメリカでは自分の意見を主張する文化が根付いている事が良く分かります。
このように、文化的な影響により日本人とアメリカ人はコミュニケーションの取り方に大きな差があり、特に皆が一同に会すビジネス会議のような場では、それが鮮明に現れるのです。
3. ゴルフとラグビーどっちがいいの?
結論:コミュニケーションスタイルに優劣は無い
外国人と仕事やプライベートで交流する際は、ゴルフとラグビーのどちらのコミュニケーション方法を取るのが良いかは一概には言えません。
それぞれのスタイルに優劣は無いのです。
私の先輩でアメリカの大学を卒業したのにも関わらず、就活で受けていた企業がすべて日系企業だった人がいます。
その先輩に、何故外資を受けないのかを聞くと「アメリカ大卒で外資系企業へ入社したら、日本のビジネス文化を学べず、日本で仕事をする際に適応出来なくなる」とおっしゃっていました。
帰国子女や外資系企業で働いているアメリカナイズされた日本人で、日本人の周りくどい文化を批判し全く合わせようとしない人がいます。
しかし、今後色々な文化の人達と関わっていくのであれば、自分のスタイルだけでやり過ごせるわけではありません。
自分のプライドとやり方を優先するのではなく、相手の立場を尊重し、臨機応変に自分のやり方を変えられる事が、コミュニケーションを円滑に出来る秘訣だと思います。
異文化コミュニケーションの際のアドバイス
日本で育った場合は、中々異文化コミュニケーション力を鍛える機会がありませんが、文化の異なる人々と会話する際は以下の点に注意すると良いでしょう。
- 異文化コミュニケーションには正しい方法や、間違った方法が無いことを受け入れて、自分の偏見を相手に押し付けない事
- 柔軟性を持って相手に合わせたコミュニケーションスタイルを実践し、自分と相手の両方のスタイルの利点を見つける事
- 相手の文化ではどのような振る舞いに対して敬意が払われるか理解し、例えそれが自分の文化と合わなくても実践してみる事
育った国や環境が違えば、考え方やコミュニケーション方法が異なるのは当然です。
そして、どちらのコミュニケーションの取り方が良い、などといった優劣は存在しません。
今後ますます異文化交流が重要となるグローバル化社会、相手のスタイルに合わせて会話することにより、円滑なコミュニケーションを実践してみては如何でしょうか?
おわりに
今回の記事では、日本とアメリカのコミュニケーションスタイルの違いについて紹介しました。
グローバルで活躍するためには、様々な価値観を持った人々と接する必要が出てきます。
異文化コミュニケーション力は、とても重要です。
相手のコミュニケーションスタイルを意識しながら、会話をしていくようにしましょう。
異文化理解力――相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養このブログでは、これからもグローバルな視野で皆様にとって有益となる情報を発進させて頂きます。今回はこの辺りで。
それではまた。